JR京浜東北線「川口駅」東口には、「樹モール」という商店街があります。
昔ながらのお店と新しいお店が入り交じっていて「おいしそう!」「かわいい」などと、つい見て回ってしまうような楽しい通りです。
今回は、この樹モールにある「香楽園」というお茶屋さんを紹介します。
創業100余年、愛され続ける老舗

大正時代の創業から、歩みを刻むこと100年。
もともと東京都北区十条で始まったこのお茶屋さんは、かつてのれん分けによって一時は十数店舗に広がったそうです。しかし時代の移り変わりとともに、現在も変わらぬ姿で残っているのは、ほぼこの一店のみとなりました。
そんな深い歴史を持つ「香楽園」ですが、いわゆる“老舗の重々しさ”は微塵も感じさせません。
むしろ、絶え間なく暖簾をくぐる人々の姿からは、地域に深く根ざした温かさが伝わってきます。
常連らしき人が店に入るなり、「元気?」と声をかけたり、若い夫婦がアイスを選ぶ傍らで、年配の女性がお茶を眺めたりしていました。
そして店の奥では、社長が忙しそうにしながらも、一人ひとりに丁寧に声をかけていました。

茶の産地ではない川口だからこそ生まれた「玉の香り」
この店の看板商品は、「埼玉・さやま仕上げ」という製法でつくられた独自ブレンドの深むし緑茶「玉の香り」です。
埼玉県推薦・彩の国優良ブランド認定茶。
香ばしさと深みのある味わいに定評があり、社長とお話ししている間にも、次々とこれを目当てにした常連さんが訪れていました。
興味深いのは、この味が“茶の産地ではない川口”で磨かれてきたという点です。
「よく煎ると、茶が黄色くなる。でも、これはそうはならないからね。」
社長が教えてくれたその言葉には、産地ではない場所で試行錯誤を重ねてきた、確かな自負が滲んでいました。

アイスとともに「玉の香り」を購入。すると、社長が店の奥に向かって、
「お茶を淹れて差し上げて」
と声をかけ、ベテランらしい男性スタッフが、丁寧な手つきでお茶を淹れてくれました。

いただいたのは「わかみどり」という銘柄。社長はこう続けます。
「『玉の香り』と同じ新茶で、標準的な緑茶。この味を覚えて帰って『玉の香り』と比べてみて」と言われました。
口に含むと、新茶らしい爽やかな香りが鼻に抜けます。しっかりとした濃い緑色と深いコクがありながら、後味は驚くほど軽やか。
この時点でも十分おいしかったのですが、“比べてみて”と言われた意味は、家に帰ってからわかりました。
次々と注文される「No.1濃い茶」。お茶屋さんだからこそのアイス
この店には、お茶と並ぶもうひとつの看板メニューがあります。
それが「お茶のアイス」です。

来店するお客さまたちを見ていると、お茶を買いに来たのか、アイスを食べに来たのかわからなくなるほど、次々と注文が入っていました。
人気は、お茶の濃さで選べる抹茶アイスで、
- No.1 濃い茶
- No.2 特選抹茶
- No.3 抹茶
という順番で、少しずつライトになっていきます。
なかでも圧倒的人気なのが、「No.1 濃い茶」です。
京・極上宇治抹茶を“最高に濃く”出したという一品で、この濃厚さは抹茶好きにはたまらないはずです。
実際、店内では次々と「No.1ください」という声が飛び交っていました。
実は、自分が最初にこの店を訪れたときの目的も、この「No.1濃い茶」でした。
ひと口食べると、抹茶の香りが一気に広がります。
苦みはしっかりあるのに、決して重たくありません。
お茶そのものの深みが、そのままアイスになったような味です。
一方、「No.2 特選抹茶」は上品なバランス感で、「No.3 抹茶」はやや甘みがあり、子どもにも人気だそうです。
さらに、上質な牛乳を贅沢に使った「濃いバニラ」、香ばしい「ほうじ茶」もあります。
お茶屋さんなのに、アイスでもこだわりが感じられ、むしろ、“お茶屋さんだからこそ”なのかもしれませんね。
母の日の光景に、この町のやさしさを見ました

訪れた日は、ちょうど母の日でした。
店内で、ひとりの青年が茶器を選んでいる姿がありました。
「母の日用に包んでくれますか?」
会計のとき、少し照れくさそうに言ったその言葉。なんとも言えないやさしさを感じました。
こういう光景が自然に生まれるお茶屋さんって、ステキですね。
ただ商品を売る場所ではなく、人の気持ちが行き交う場所でした。
レシピ通りに淹れてみた「玉の香り」
帰宅後、購入した「玉の香り」を、一緒に持たせてくれた「おいしいお茶の入れ方(深むし編)」の通りに淹れてみました。

湯気とともに立ち上がるいい香り!
そして飲んだ瞬間、「わかみどり」との違いがはっきりわかりました。

なんとも言えない、香ばしいお茶の香りが鼻に抜けていきました。
新茶らしい透き通った味わいと、それでいて、深むしらしいしっかりとした苦みが感じられます。
さらに、やさしい甘みがあとからやってきます。
これは確かに、人が通い続ける味だと思いました。

100年続く店には、理由があるように思います。
その理由は、ただ“おいしい”だけではなさそうです。
人を迎えるやさしさだったり、この町で長く愛されてきたぬくもりだったり。
そして、人と人とのやり取りが静かに重なって生まれる、心地よい空間も理由のひとつになっているのではないでしょうか。
気づけば、自分もすっかり、このお茶に魅了されていました。
香り豊かなお茶はもちろん、人と人とのやさしいやり取りや、この町ならではのあたたかな空気を感じに、訪れてみてはいかがでしょうか。
香楽園本店
住所:埼玉県川口市栄町3-12-2
アクセス:JR京浜東北線「川口駅」東口から徒歩約5分
TEL:048-251-6334
営業時間:10:00-18:00
定休日:火曜日
駐車場:なし


















